鍼灸師(しんきゅうし)は、東洋医学に基づいて「鍼(はり)」や「灸(きゅう)」を使って治療する専門職です。鍼灸師になるには国家資格の取得が必要となります。
病気の治療や健康管理だけでなく、美容やスポーツなど幅広いフィールドに活躍の場が広がる鍼灸師について、「どのような仕事をするのか」「鍼灸師になるにはどのようなプロセスが必要になるのか」「収入はどのぐらいあるのか」などについて詳しく解説します。
これから鍼灸師を目指す方や、美容やエステサロン、スポーツやアスリートのサポートなどに関心がある方は是非参考にしてください。
鍼灸師とは?
「鍼灸師(しんきゅうし)」とは、東洋医学の医療技術職です。鍼(はり)と灸(きゅう)を使ってツボを刺激して、人間が持つ治癒能力を高め治療します。
鍼灸師は、患者の体に直接触れて施術するため、患者との信頼関係を築くための高いコミュニケーションスキルが必要とされます。鍼や灸の技術だけでなく、患者の気持ちを和ませる話術や所作も重要になります。
鍼灸師の仕事内容
鍼灸師の仕事内容はおもに2つあり、ひとつは「鍼」を使用して全身のツボを刺激して治療する「はり師」としての仕事で、もうひとつは「灸」を使用して全身のツボを温熱で刺激する「きゅう師」としての仕事です。
はり師ときゅう師は別々の国家資格ですが、両方の資格を取るケースが大半であるため職業として「鍼灸師」と呼ばれています。
鍼と灸による治療は「脈診」や「望診」などで患者を検査・評価して治療するツボを選び、刺激量を決めます。「脈診」は手首の動脈に指を触れて、脈の打ち方の変化を感知して体調や病状を診ることを指します。「望診」は表情や血色、舌の状態を観察して体調や病状を診ることです。
鍼灸師になるには
鍼灸師になるには、はり師免許ときゅう師免許の取得が必要です。国家試験の合格が免許取得の条件となります。
また、国家試験の受験には、認定を受けた大学、短大、専門学校での3年以上の修学が必要です。
鍼灸師になるまでの流れ
鍼灸師になるまでのプロセスを高校卒業後から段階的に紹介します。
STEP1:鍼灸師養成施設で学ぶ
STEP2:国家試験を受験する
STEP3:はり師免許・きゅう師免許を取得する
STEP4:病院や診療所などで就業、または開業する
高校卒業後、認定を受けた大学、短大、専門学校で3年以上の修学が必要です。修学中の履修科目としては、解剖学、生理学、臨床医学など医療系の基礎知識に加えて、東洋医学概論、経路経穴概論といった鍼灸師特有の知識をはり・きゅうの実技と交えて学びます。
大学や専門学校を卒業後にはり師きゅう師の国家試験を受験します。国家試験に合格すると鍼灸師として働く資格が付与されます。
鍼灸師の年収と月収
鍼灸師の収入は勤務形態によって異なります。国家資格取得後に、病院などの医療機関や治療院、スポーツ関連施設に就職をすることになりますが、経験を積んだ後に独立開業をする方もいます。
病院などに勤務する場合よりも、独立開業した場合のほうが、収入が高い傾向にあります。
鍼灸師の年収
職業情報提供サイトjobtagによると、鍼灸師の平均年収は443.3万円です。年齢別では55~59歳で540.42万円が最大となっており、技術職の特徴でもある経験と年収の相関が見られます。
年齢 |
平均年収 |
~19歳 |
201.48万円 |
20歳~24歳 |
338.53万円 |
25歳~29歳 |
385.54万円 |
30歳~34歳 |
423.88万円 |
35歳~39歳 |
451.29万円 |
40歳~44歳 |
512.72万円 |
45歳~49歳 |
456.24万円 |
50歳~54歳 |
517.27万円 |
55歳~59歳 |
540.42万円 |
60歳~64歳 |
469.69万円 |
65歳~69歳 |
294.96万円 |
出典:職業情報提供サイトjobtag
鍼灸師の月収
職業情報提供サイトjobtagに掲載されている「ハローワークの無期フルタイム求人の中間値の平均」によると、鍼灸師の月収は平均で25.7万円とされています※1。
また、月収から厚生年金や社会保険料が引かれるため、実際の手取り額はこれを下回ります。
※1 出典:職業情報提供サイトjobtag
鍼灸師の勤務先
鍼灸師としての勤務先、就職先で代表的なものが鍼灸院です。鍼灸院では東洋医学にもとづき、おもにはりときゅうでの治療をおこなっていますが、あわせて個別の資格が必要となる「あん摩マッサージ指圧師」による指圧マッサージの施術もおこなわれることがあります。
はりやきゅうを美容目的で施術する施設として、エステサロンなどがあります。より美容に関心がある方は、エステサロンや美容鍼灸サロンでの勤務がおすすめです。
また、各種スポーツ施設でも鍼灸師が勤務をしているケースがあります。アスリートの健康管理として鍼灸が用いられており、運動が得意な方やスポーツに関心がある方におすすめです。
このような鍼灸院やエステサロンなどに就職をして勤務する形態もありますが、なかにはフリーランスという立場で各施設から業務委託を受けて働くケースもあります。また、ご自身で鍼灸院やエステサロンを開業することも可能なため、鍼灸師としての働き方は多様です。
鍼灸師に必要な国家資格とは
鍼灸師になるためには、はり師ときゅう師の国家資格を取得する必要があります。それぞれの国家試験は毎年1回開催されており、認定を受けた専門学校もしくは短大であれば3年間、大学の場合は3年以上の修学を受けることで受験資格が得られます。
国家試験の費用は、受験手数料として14,400円かかります。
鍼灸師の試験内容
はり師ときゅう師の国家試験は筆記試験です。はり師、きゅう師に共通する試験科目として下記のようなものがあります。
- 医療概論
- 衛生学・公衆衛生学
- 関係法規
- 解剖学
- 生理学
- 病理学概論
- 臨床医学総論・臨床医学各論
- リハビリテーション医学
- 東洋医学概論
- 経路経穴概論
また、はり師・きゅう師それぞれで、「はり理論および東洋医学臨床論」「きゅう理論および東洋医学臨床論」が試験科目として課せられます。
なお、はり師ときゅう師の試験を同時に受験する場合には、はり理論ときゅう理論以外の共通科目の一方が事前申請で免除されます。
鍼灸師試験の合格率
はり師ときゅう師の国家試験は毎年1回実施されています。1問1点で合計170点満点の試験で、102点以上で合格となります。合格率は毎年変化していますが、概ね70%の合格率といわれているので特別に難易度が高い試験ではありません。
試験回数(年度) |
受験者数(名) |
合格者数(名) |
合格率 |
第27回(2019年度) |
4,861名 |
3,712名 |
76.4% |
第28回(2020年度) |
4,431名 |
3,263名 |
73.6% |
第29回(2021年度) |
3,853名 |
2,698名 |
70.0% |
第30回(2022年度) |
3,982名 |
2,956名 |
74.2% |
第31回(2023年度) |
4,084名 |
2,877名 |
70.4% |
はり師国家試験の受験者数と合格率(出典:公益財団法人・東洋療法研修試験財団)
試験回数(年度) |
受験者数(名) |
合格者数(名) |
合格率 |
第27回(2019年度) |
4,655名 |
3,656名 |
78.5% |
第28回(2020年度) |
4,308名 |
3,201名 |
74.3% |
第29回(2021年度) |
3,797名 |
2,740名 |
72.2% |
第30回(2022年度) |
3,892名 |
2,963名 |
76.1% |
第31回(2023年度) |
4,010名 |
2,875名 |
71.7% |
きゅう師国家試験の受験者数と合格率(出典:公益財団法人・東洋療法研修試験財団)
鍼灸師の国家資格は働きながらでも取得可能?
鍼灸師の国家資格は働きながらの取得も可能です。国の認定を受けた専門学校などの鍼灸師養成機関を卒業し、国家試験に合格できれば取得できるためです。
学校によっては、夜間コースなどを設置している学校もあるので、昼間に仕事で忙しい場合は夜間コースを利用しましょう。
まとめ
鍼灸師は、東洋医学にもとづき鍼や灸を使用して全身のツボを刺激し治療します。人間の治癒能力を高めることで気のめぐりを改善させる技術職です。鍼灸師になるには、国の認定を受けた養成機関を卒業して、国家試験に合格することが必要です。
鍼灸師の活躍の場はさまざまなフィールドに拡大しており、アスリートの健康管理といったスポーツのフィールドでも活躍する鍼灸師が大勢います。また、鍼灸師以外にも、パーソナルトレーナーなど、アスリートのサポートをおこなう職種が多くあります。
鍼と灸によるボディメンテナンスはもちろん、スポーツ障害・スポーツ損傷の治療やリハビリ、スポーツパフォーマンスの向上も図れるため、今後も成長が見込まれます。
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