フィットネス業界は2020年に起きた社会情勢の変動により大きなダメージを受けましたが、2024年時点では成長傾向にあります。
しかし、ビジネスモデルは変化しつつあるため、これから業界に参入したいと考えている方は現状を知っておくと良いでしょう。
この記事ではフィットネス業界の現状や市場の今後などを解説します。フィットネス業界の市場規模や現状などを知りたい方は参考にしてください。
フィットネス業界の市場規模の現状
経済産業省が発表している「特定サービス産業動態統計調査」によれば、フィットネス業界の2023年10月の売上高は約239億円※1で、2022年度の売上高は2,724億円です※2。
次の表は、「特定サービス産業動態統計調査」の2020年度から2022年度までの売上高やフィットネスクラブなどの利用者をまとめたものになります※2。
年度 |
売上高 |
フィットネスクラブ・スクール利用者数 |
2020年度 |
約2,104億円 |
約1.6億人 |
2021年度 |
約2,487億円 |
約1.9億人 |
2022年度 |
約2,722億円 |
約2.1億人 |
「フィットネスクラブ・スクール利用者」に関しては同一人物を複数回カウントしていますが、フィットネスクラブの売り上げや利用者は増えている傾向があります。
そのため、フィットネスクラブの市場規模は着実に伸びているといえるでしょう。
※1 出典:経済産業省「Ⅱ.個別業種の動向 【対事業所サービス業】」
※2 出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
フィットネスの市場規模が伸びている理由
フィットネスクラブの市場規模が伸びている理由は、おもに以下のように考えられています。
- フィットネスが日常生活の一部になりつつあるため
- 顧客のニーズに合ったビジネスモデルを展開できるため
- ICT機器との連携によりさまざまなサービスが受けられるため
上記を順番に解説します。
フィットネスが日常生活の一部になりつつあるため
2012年以降、フィットネスクラブの事業者数と会員数は次の表のとおり上昇傾向にあります※3。
年度 |
事業者数 |
会員数 |
2012年 |
1,030社 |
約292万人 |
2013年 |
1,043社 |
約300万人 |
2014年 |
1,081社 |
約300万人 |
2015年 |
1,100社 |
約301万人 |
2016年 |
1,225社 |
約329万人 |
2017年 |
1,330社 |
約336万人 |
2018年 |
1,426社 |
約336万人 |
2019年 |
1,461社 |
約336万人 |
2020年 |
1,583社 |
約268万人 |
2021年 |
1,506社 |
約257万人 |
2022年 |
1,500社 |
約264万人 |
2020年に起きた社会情勢の変化によって会員数は減りましたが、事業者数の増加によりフィットネスに対する意欲が高まりつつあります。実際に、フィットネスクラブの会員数も増加に転じています。
※3 出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
顧客のニーズに合ったビジネスモデルを展開しているため
2020年以降は社会情勢の変化や働き方の変革などもあり、大規模な総合クラブよりも顧客のニーズに合った、次のようなビジネスモデルのフィットネスクラブが出店すると予想されます。
- 女性専用の小規模ジム
- 24時間営業のジム
- マイクロジム
- ボディジムなど
顧客のニーズに合わせたビジネスモデルが定着していくことは、フィットネスクラブの市場規模の増加につながります。
ICT機器との連携によりさまざまなサービスが受けられるため
社会情勢の変化や働き方の変革はフィットネスクラブへICT機器の導入を促しました。
ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)の略称で、インターネットのような通信技術を利用したサービスやシステムなどを指します。
2020年以降、AIやロボティクスなどの技術やシステムを導入するフィットネスクラブは増加しており、次のようなサービスやシステムが利用できるでしょう。
- 監視システムによる無人化
- 電子決済の利用可能
- アプリ活用によるスタッフとのコミュニケーションの円滑化
また、フィットネスクラブだけでなく、異業種とのコラボ展開をしている場合もあり、フィットネスにとどまらないさまざまなサービスが提供されています。
これらの動きがフィットネスクラブの市場規模増加に影響を与えているでしょう。
フィットネス業界の課題
フィットネス業界の今後の課題は以下のとおりです。
- 社会にあわせてビジネスモデルを見なおす必要がある
- 新しいプログラムを考えなければならない
- 優秀な人材を獲得する必要がある
上記を順番に解説します。
社会にあわせてビジネスモデルを見なおす必要がある
フィットネス業界は2011年の東日本大震災により大きなダメージを受けるも、2014年からは成長軌道に入っており、2019年には市場規模が4,939億円となり市場最高値を記録しています※4。
しかし、2020年に起きた社会情勢の変化により市場規模は縮小し、従来の総合フィットネスクラブでは会員数の減少が起きました。
フィットネスクラブは接客業や不動産業など複数のビジネスの要素を持つため、これらの社会情勢にあわせて定期的にビジネスモデルを見なおす必要があると覚えておきましょう。
※4 出典:一般社団法人 日本フィットネス産業協会「Fitness Industry Association NEWS」
新しいプログラムを考えなければならない
2020年以降は大規模な総合クラブよりも顧客のニーズに合ったフィットネスクラブの出店が目立っており、今後も続くと予想されています。
そのため、新しい顧客を獲得するには、ニーズに合わせたプログラムやトレーニング内容を考えることが重要です。
しかし、新しいプログラムを考えるには、顧客が求めているニーズの分析や、ある程度の知識などが求められます。
優秀な人材を獲得する必要がある
フィットネスクラブの数や利用者数が上昇傾向にあるのに対して、指導員数は2006年から2022年まで3万人台を維持しており、増えているとはいえません※5。
市場規模の増加に対して指導員数が大きく増えないのは若手が少ないことが予想されます。
実際、職業情報提供サイト「jobtag」では、スポーツインストラクターの平均年齢は36.9歳となっています※6。
今後も、スポーツインストラクターやパーソナルトレーナーに新しくなる若手が少ない状態が続くと、少ない人数でも対応できる優秀な人材の獲得が重要になってくると考えられます。
※5 出典:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」
※6 出典:job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))「スポーツインストラクター」
フィットネス業界の今後に対応するにはなにが必要?
フィットネス業界の今後に対応するために必要と考えられるおもな方法は以下のとおりです。
- 資格を取得した人材
- フィットネスクラブ以外のビジネスモデルの展開
上記を順番に解説します。
資格を取得した人材
新しいプログラムを考えたり、顧客のニーズに合わせたビジネスモデルを展開したりするためには専門的な知識や技能が必要です。
しかし、スポーツインストラクターやパーソナルトレーナーなどは資格が必須の仕事ではないため、人によって身に着けている知識や技能に差があります。
そのため、専門的なスキルや知識を証明できる次のような資格の取得が重要です。
年度 |
フィットネスクラブ・スクール利用者数 |
NSCA-CPT |
- さまざまな年齢や性別の方を対象にトレーニング指導をおこなう知識が身に付いているという証明ができる資格
|
NESTA-PFT |
- 健康やフィットネス、ウェルネスの改善をサポートする総合的な知識や技術を習得しているという証明ができる資格
|
上記のような資格を取得している人材の獲得や、資格取得を目指した社員の育成などが求められます。
フィットネスクラブ以外のビジネスモデルの展開
フィットネスクラブは社会情勢の変化に影響を受けやすいビジネスモデルのため、おもに次のようなビジネスモデルを展開しておくと良いでしょう。
- 特定検診・特定保健指導
- 介護予防のアウトソース
- 健康カウンセリング事業
フィットネスを活かしたビジネスモデルを展開することで、社会情勢の影響を軽減できるため、市場規模の更なる発展が見込めます。
まとめ
フィットネス業界の市場規模は、2020年に起きた社会情勢の変化による影響から回復して、上昇傾向に転じています。
しかし、市場規模の上昇傾向に比べて指導員数はさほど増えていないため、今後は優秀な人材の獲得が重要です。
たとえば、パーソナルトレーナーとして就職する際にNSCA-CPTやNESTA-PFTなどの海外でも通じるような資格を取得していることが要求される可能性はあります。
そのため、これからフィットネス業界で働こうとしている方は、資格取得を目指すと良いでしょう。
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