多額の資金を投入してパーソナルジムをオープンしても、スムーズに集客できるとは限りません。「なかなか集客できない」とお悩みの経営者の方もいるのではないでしょうか。
早期に事業を軌道に乗せるためには、集客方法の工夫が求められます。自店舗を認知してもらうための施策を講じ、消費者から「利用したい」と感じてもらえるよう努力しなければ、経営が行き詰まる可能性があります。
この記事では、パーソナルジムの経営者やこれから開業する予定の方に向けて、集客のためにできることや手法などを解説するので、ぜひご一読ください。
パーソナルジムとは
運動や筋トレをする施設には、スポーツジムやフィットネスクラブなど、多様な種類があります。
その中でも「パーソナルジム」とは、専属のパーソナルトレーナーがマンツーマンで、各顧客に適したメニューを提案し、トレーニングの指導をするジムです。パーソナルジムは「パーソナルトレーニングジム」などと呼ばれる場合もあります。
パーソナルジムでおこなわれる具体的な指導内容は、ストレッチ・有酸素運動・無酸素運動の指導や、食事指導です。プロのトレーナーが一対一で指導をおこなうため、トレーニングフォームについて詳細に聞きやすかったり、疑問点を質問しやすかったりする特徴があります。
パーソナルジム経営者が「集客できない」と感じる原因
顧客と一対一で向き合えるパーソナルジムですが、経営していると「集客できない」と感じることもあるでしょう。以下は、パーソナルジム経営者が集客できないと感じる状況に陥るおもな原因です。
- 大手企業が広告宣伝活動を積極的に実施しているため
- 比較的開業しやすく競合店舗が多いため
それぞれに関して詳しく説明します。
大手企業が広告宣伝活動を積極的に実施しているため
近年、大手企業が広告宣伝活動を積極的に実施し、自社が運営するパーソナルジムに消費者を取り込んでいます。
そのため、広告宣伝活動に投じることが可能な資金が少ない企業(店舗)は、選ばれにくい傾向があり、「集客できない」と感じることがあるかもしれません。
比較的開業しやすく競合店舗が多いため
パーソナルジムは、大規模なスポーツジムと比べて比較的低コストで開業できる傾向が見受けられます。
マンツーマンで指導する形態なので、パーソナルトレーナーと顧客の2人を収容できる程度の面積の店舗で営業が可能です。そのため、ライバルが多く、顧客の奪い合いが発生していることも、「集客できない」と感じる原因としてあげられます。
パーソナルジムの集客のためにできること
開業したパーソナルジムに集客できないと感じているなら、対策に取り組む必要があります。以下は、パーソナルジムの経営者が集客のためにできることです。
- 競合店舗の調査・分析をおこなう
- 競合との差別化を図る
それぞれに関して詳しく説明します。
①競合店舗の調査・分析をおこなう
まず、同じ地域内で営業している競合店舗のリサーチを実施しましょう。調査する要素としては、ターゲットとしている客層・営業時間・料金などがあげられます。
リサーチする際には、競合店舗の公式サイトをチェックするほか、顧客のリアルな意見が確認できるインターネット上の口コミをチェックするのも良いでしょう。
② 競合との差別化を図る
次に、自店舗がどのような層をターゲットに据えるのかを明確にしましょう。ターゲットの例としてあげられるのは、「体型が気になっている若い女性」「健康に不安がある中高年・高齢男性」などです。
そのうえで、ターゲットの来店を促すために、たとえば「特典を用意する」といった手法で、競合店舗との差別化を実施します。特定のターゲットを対象に価格以外の点で差別化したサービスを提供する戦略(差別化集中戦略)を採用する中小企業は、営業利益率が高い傾向が見受けられます。
パーソナルジムの具体的な集客手法
パーソナルジムの具体的な集客手法(自店舗を認知してもらうための広告宣伝活動を実施する方法)は、オフラインでの手法とオンラインでの手法に大別することが可能です。
以下、それぞれについて詳しく説明します。なお、いずれかひとつに限定せず、複数の手法を組み合わせることもご検討ください。
オフラインでの集客手法
以下は、オフラインでの具体的な集客手法です。
- 紙媒体の大量配布による手法(ポスティングなど)
- 店舗外へのポスター掲示や置き看板・のぼり旗の設置
- イベントやセミナー開催など
各手法に関して詳しく説明します。
紙媒体の大量配布による手法(ポスティングなど)
店舗周辺に居住する世帯の郵便受けにチラシを配布する「ポスティング」を実施し、自店舗の認知度向上を目指しましょう。チラシには割引クーポンを添付するのもおすすめです。
チラシは郵便受けにポスティングするだけでなく、スーパー・飲食店などに置かせてもらえるよう交渉する方法もあります。
そのほか、新聞折り込みチラシやダイレクトメール配布サービスの活用、フリーペーパー・地域情報誌への広告出稿も手段としてあげられます。
店舗外へのポスター掲示や置き看板・のぼり旗の設置
店舗の壁にポスターを掲示したり、店舗周辺にのぼりを設置したりすることも集客につながる施策です。
近隣住民が買いものや通勤・通学などでとおり過ぎた際に、自店舗の存在を認知してもらえます。帰宅後にパソコンで、あるいは、その場でスマートフォンを用いて店舗について調べたうえで、興味を持って来店するケースがあるかもしれません。
また、必要に応じて、スーパー・飲食店などの店内にポスターを掲示させてもらえるよう交渉しましょう。
なお、ポスターやのぼりにはQRコードを印刷しておくと、店舗の公式サイトや公式SNSアカウントに誘導しやすくなります。
イベントやセミナー開催など
イベントやセミナーを開催し、来場者に対して自店舗を宣伝することも検討しましょう。時間的・人員的に余裕がある場合は、地域住民に対して戸別訪問を実施し、対面で営業することも選択肢のひとつです。
また、既存顧客に、新規顧客を紹介してもらうように促すことも良いでしょう。紹介があった場合に、既存顧客・新規顧客の双方に割引クーポンなどの特典を進呈するしくみを用意すると、新規顧客を紹介してもらいやすくなります。
オンラインでの集客手法
以下は、オンラインでの具体的な集客手法です。
- 店舗の公式Webサイト
各種SNS・動画配信
メールマガジン
Web広告・SNS広告
各手法に関して詳しく説明します。
店舗の公式Webサイト
店舗の公式Webサイトや公式ブログを制作・執筆し、SEO(Search Engine Optimization、検索エンジン最適化)対策を講じましょう。SEO対策とは、消費者がGoogleなどの検索エンジンで検索した際に、検索結果画面の上位に自店舗のWebサイトやブログを表示させるための施策です。
経営者やスタッフがITに詳しければ、自力でWebサイトやブログを制作したり、SEO対策を講じたりすることも可能です。ただし、コア業務(接客・トレーニングの指導など)に回す時間を確保したいのであれば、外注することもご検討ください。
なお、スマートフォンが普及している昨今では、スマートフォンでサイトを閲覧するユーザーも多いです。そのため、パソコンとスマートフォンの両方に対応したサイト・ブログを制作することが求められます。
また、制作したサイトは定期的に更新することも大切です。キャンペーン情報などを常に最新の状態に保ちましょう。
各種SNS・動画配信
X(旧Twitter)、LINE、Instagram、Facebook、TikTokなど、各種SNSで宣伝することも集客に役立ちます。その際には文字だけではなく、トレーニング風景の画像・動画を投稿すると、多くのユーザーに見てもらいやすくなるでしょう。
YouTubeなどの動画配信サイトで宣伝することも有効です。トレーニング動画などを投稿して、集客につなげてください。
メールマガジン
Webサイトにメールアドレス登録フォームを設置し、会員向けに割引情報やトレーニングに関する情報などをメールマガジンで配信することも検討しましょう。メールマガジンは、SNSアカウントを持っていない消費者に対してアプローチできます。
メールマガジン配信の際には、購読者が実際に店舗を訪問したくなる内容を配信することが重要です。受け取り手が読みやすいよう、長文ではなく、伝えたい内容を短文で簡潔にまとめましょう。
Web広告・SNS広告
Web広告やSNS広告の出稿・配信も集客につなげる手段のひとつです。ただし、これらは有料サービスなので、費用対効果を見極める必要があります。
たとえば、「リスティング広告(検索結果画面の上下に表示される広告)」は、検索結果1位のサイトよりも上部の目立つ位置に表示されるので、予算に余裕がある場合は活用すると良いでしょう。
ただし、クリックされると費用が発生するため、予算に制約がある場合は利用しないほうが良いかもしれません。
また、SNSで広告を配信すれば、ユーザーの年齢・興味などに基づいて配信先を絞り込むことが可能です。
各種資格を取得してアピールすることも集客に役立つ
パーソナルジムは、無資格でも開業することが可能です。そのため、市場に資格保有者が少ない状態であり、経営者やスタッフが資格を保有していることは、他店舗との差別化につながって集客に役立ちます。
パーソナルジムの経営者やスタッフは各種資格を取得し、チラシや公式サイト、SNSなどでアピールしてはいかがでしょうか。トレーニングに関する知識・スキルがあることを客観的に証明できると消費者から信頼され、集客増を実現しやすくなるでしょう。
以下は、パーソナルジムの経営者やスタッフにおすすめの資格の例です。
- NSCA-CPT
- NASM-CPT
- NESTA-PFT
- JATI-ATI
- 健康運動指導士・健康運動実践指導者
それぞれの資格に関して詳しく説明します。
NSCA-CPT
NSCA-CPT(NSCA認定パーソナルトレーナー)とは、アメリカに本部を置くNSCA(National Strength and Conditioning Association、全米ストレングス&コンディショニング協会)が認定するパーソナルトレーナー資格です。
健康と体力に関して、評価・動機づけ・教育・トレーニング・コンディショニング全般の指導を実施するための専門的能力を有することを客観的に証明できます。
NCCA(National Commission for Certifying Agencies、全米資格認定委員会)によって承認された権威ある資格です。
NASM-CPT
NASM-CPT(NASM認定パーソナルトレーナー)とは、NASM(National Academy of Sports Medicine、全米スポーツ医学協会)が認定する資格です。ノースカロライナ大学チャペルヒル校のNASM研究所によってサポートされています。
NCCA(全米資格認定委員会)によって米国内で最高水準にランク付けされており、科学的原理に基づいてクライアントにトレーニングプログラムを提供する能力があることを客観的に証明することが可能です。
NESTA-PFT
NESTA-PFTとは、NESTA(National Exercise & Sports Trainers Association、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会)が認定するパーソナルフィットネストレーナー資格です。
身体に関する専門知識・技術、ビジネススキルがあることや、科学的根拠にもとづいてプログラムを作成可能であることを客観的に証明できます。日本国内だけではなく、国際的に通用する資格です。
NESTAでは、日本支部の「NESTAジャパン」を立ち上げ、日本人向けにプログラム・試験を提供・実施しています。
JATI-ATI
JATI-ATI(Accredited Training Instructor)とは、スポーツ選手や一般人を対象としたトレーニング指導の専門家として活動するための基礎資格です。特定非営利活動法人日本トレーニング指導者協会(JATI)が認定を実施しています。
JATI-ATIの資格では、対象や目的に応じて、科学的根拠にもとづく適切な運動プログラムを作成・指導するために必要な知識を習得していることを客観的に証明できます。
健康運動指導士・健康運動実践指導者
健康運動指導士・健康運動実践指導者の資格について、下表に各資格の概要をまとめました。
資格名 |
内容 |
健康運動指導士 |
保健医療関係者と連携し、個々人の心身の状態に応じて安全で効果的な運動を実施するためのプログラム作成・計画調整や、生活習慣病のハイリスク者に対する個別指導・支援を担当する能力があることを証明する資格 |
健康運動実践指導者 |
積極的な健康作りを目的とした運動を安全かつ効果的に実践指導できる能力を有する(見本を示すことが可能で、集団に対する運動指導技術に長けている)ことを証明する資格 |
いずれも、公益財団法人健康・体力づくり事業財団が認定・登録を実施しています。
資格取得をサポートしてくれるスクールに通うこともひとつの手段
上述した資格はどれも専門的な内容であり、独学ではなかなか勉強が難しいと感じる場合があるかもしれません。そんなときには、資格取得のサポートをおこなっているトレーナー育成スクールへ通うことも検討してはいかがでしょうか。
トレーナー育成スクールによっては、資格取得をサポートしてくれる場合があります。トレーナー育成スクールでは開業を志す方だけでなく、すでに開業済みの方も学んでいるケースもあり、集客に関する悩みを相談できる同業者の知人も作りやすいでしょう。
また、パーソナルジムを経営している講師が在籍している場合もあり、集客や経営に関して質問できる可能性があります。
資格を取得してスキルアップし、パーソナルジムの集客につなげたいなら、トレーナー育成スクールに通うことも選択肢として検討すると良いでしょう。
まとめ
パーソナルジムをオープンしても、スムーズに集客できるとは限りません。集客できない時期が続き、憔悴している経営者もいるのではないでしょうか。
この記事を参考にして、さまざまな施策を講じれば、集客増の実現につながる可能性があります。スクールに通って資格を取得して店舗の公式サイトなどでアピールしたり、パーソナルジムを経営している講師に集客や経営について相談したりすることも有効です。
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