スポーツ医療とは、スポーツ全般に必要な医療の知識のことです。スポーツ分野だけでなく、日々の健康増進のためにも活かされており、医療系の資格を取得する際に、大学や専門学校で学ぶことの多い分野でもあります。
この記事ではスポーツ医療の基礎知識や、なにに応用されているのか、勉強方法、勉強したことを活かせる職業を解説します。
スポーツ医療に興味がある方や、スポーツ関連の仕事に就きたい方は参考にしてください。
スポーツ医療とは
スポーツ医療とは、スポーツ全般に必要な医学の知識や対策のことです。医療の視点から運動の役割を多角的に捉え、スポーツをおこなう際の身体的変化や健康への影響、更に体力や競技パフォーマンスの向上について研究します。スポーツやトレーニングを医療技術に応用したり、健康増進のための体力作りを学んだりと幅広い分野を対象としています。一般的にはスポーツによって起きたケガや、パフォーマンス力の向上に活かされています。
スポーツ医療として独立した分野はなく「整形外科学」や「リハビリテーション学」とあわせて研究や実践がおこなわれています。
似たものに「スポーツ科学」分野もありますが、これは運動時の体の変化や必要な栄養、最適なトレーニング方法などを学ぶものです。
スポーツ医療はなにに役立つ?
スポーツ全般に応用されるスポーツ医療は、おもに以下にあげる3点に役立ち、応用されています。
スポーツ選手のパフォーマンス力の向上
スポーツ医療が一番活かされるのは、スポーツ選手のパフォーマンス向上に向けた取り組みです。選手がスポーツ中にケガした場合、競技に復帰できるように最適なサポートをします。
サポート方法はリハビリテーションともいわれる運動療法や、必要時におこなう手術療法などで、いずれもスポーツするうえで使う部位などを考慮しながら治療をおこないます。
スポーツにおけるケガだけでなく、日常生活における膝痛や腰痛などのケガや病気においてもスポーツ医療が応用されることもあります。
また、スポーツ医療は、より多くのサポートが必要なパラスポーツにも応用され、麻痺などによる筋力低下や、安全に競技をおこなうためのサポートなどもおこなわれています。
ケガなどのリハビリ全般
スポーツ医療はリハビリ全般にも活かされています。
先述したようにスポーツ以外のケガでも、膝などのスポーツでよくケガを負う部位であれば、スポーツ医療を応用した治療やリハビリをおこないます。
また、スポーツでよく動かす部位である「運動器」だけがスポーツ医療の対象ではありません。心臓の疾患や生活習慣病などの内科系疾患も体を動かす動作はあるため、負担の少ない運動法など、スポーツ医療を応用して治療がおこなわれています。
身体の健康増進のため
近年、スポーツ医療はケガや病気の方だけでなく、健康な方の健康増進のためにも活かされています。近年の高齢化の進展で人々の健康・運動志向が高まっており、高齢者の筋力低下予防や生活習慣病の予防、心臓疾患のリハビリテーションなどのスポーツ医療の需要が高まっています。
現在日本では運動不足による生活習慣病の増加や、年を重ねたとき健康に生活できる方が減るのではないかという問題が提起されています。このような状況を防ぐための日々取り入れたい運動などに、スポーツ医療が応用されています。
スポーツ医療を学ぶ方法
さまざまな分野で活かされているスポーツ医療は、おもに以下で解説する5つの方法で学べます。
医療系の大学
スポーツ医療は医師や看護師、理学療法士、作業療法士などを目指す場合に通う医療系の大学で学べます。
「スポーツ医学」の分野を学ぶ場合もありますが、「健康科学」や「整形外科学」「リハビリテーション学」の中で学ぶ場合もあります。
医療系の大学でスポーツ医療を学ぶと、必要な資格と共にスポーツ医療の知識も増えるため、将来的にスポーツ系分野で活躍しやすいでしょう。
専門学校
大学と同様に、専門学校でもスポーツ医療を学べ、授業の中でスポーツ医療に触れる場面があります。
理学療法士や作業療法士、看護師は専門学校で学んでも取得できるため、これらの資格の勉強をしながらスポーツ医療も学びたい場合は、専門学校に通うのもおすすめです。
専門学校は大学に比べると、実践を学ぶ機会が多く実習も多い特徴があります。即戦力としてのスキルや知識を身につけたいなら、専門学校も良いでしょう。
トレーナー専用スクール
スポーツトレーナーは、アスリートに付いてケガの予防やリハビリテーション、練習の指導をします。スポーツジムなどで一般の方にパーソナルトレーニングもおこないます。
もしパーソナルトレーナーを目指す場合には、トレーナー専用スクールに通うことで、授業の中でスポーツ医療を学べます。
ジムでのトレーニングはスポーツの一環でもあるため、スポーツ医療を活かしやすい分野です。そして、ケガをしやすい部位や安全な運動方法を学ぶためにも必要な知識です。
もしも社会人で、専門学校に通うのは時間がかかると感じる場合には、現在の生活スタイルにあわせて学びやすいトレーナー専用スクールをおすすめします。
独学で学ぶ
スポーツ医療の知識を深めたい場合や、取得したい資格が明確でない場合は、書籍を購入したり、動画などを利用したりして独学で学ぶ方法もあります。スポーツ医療に関する書籍は数多く販売されているため、ご自身が興味のある分野を選んで学ぶと良いでしょう。
しかし、販売されている書籍の多くは専門書であり、専門家でないと理解できない内容もあります。その場合はイラストが多いものや「初心者でもわかりやすい」などの表記があるものを選びましょう。
「スポーツ医学検定」の認定を取得する
スポーツ医学検定は、一般社団法人日本スポーツ医学検定機構が認定している資格で、スポーツによるケガや体についての知識の証明になります。アスリートご自身やその家族、スポーツの指導者など、スポーツ医療に関わるさまざまな方が対象です。
公式テキストや公式アプリを使用してご自身で必要な知識を学び、試験を受けて合格すると資格を取得できます。
レベルにあわせて3級~1級にわかれているため、まずは3級から学び、3級に合格したら2級、のように徐々に難易度を上げていくのも良いでしょう。
「スポーツ医療を学びたいけれど、なにから勉強したら良いのかわからない」場合には、資格も取得できる「スポーツ医学検定」を受けてはいかがでしょうか。
スポーツ医療を活かせる仕事や場所
スポーツ医療を活かせる場はスポーツ関連から医療福祉分野、教育機関など数多くあります。そのなかでもスポーツ医療を活かしやすい仕事として、4つの職業を詳しく解説します。
また、以下で紹介する職業は、スポーツ医療を学ぶだけで働くことができるものではありません。あくまで、スポーツ医療を活かせるというものであり、そのほかの勉強や資格が必要になる点は覚えておきましょう。
保健体育教諭
保健体育教諭は中学校や高等学校などでスポーツの実技指導をしたり、ケガの応急処置の方法などを教えたりする職業です。
スポーツ医療の知識を持っていると、実技指導するうえでケガしやすい部位を伝えたり、効果的なトレーニング方法なども指導しやすくなったりします。
保健体育教諭を目指す場合、大学に通って教員免許を取得する必要がありますが、講義ではスポーツ医療の知識や必要な実技も学べます。
整形外科のクリニックや病院
スポーツ医療を活かしやすい場として、整形外科領域のクリニックや病院もあげられます。病院で活躍するスタッフは医師や看護師、理学療法士、作業療法士、トレーナーなど、さまざまな職種が連携しています。
スポーツによるケガや関連部位のケガは、整形外科で治療やリハビリテーションをおこなう場合がほとんどです。そのため学んだ知識を活かしやすいでしょう。
また、医師であれば「整形外科専門医」や「リハビリテーション専門医」のように、スキルアップにもつなげられます。
福祉施設などのスタッフ
地域の福祉施設や公共施設のスタッフなども、スポーツ医療の知識を活かせます。
病院やクリニックにおける治療やリハビリテーションとは異なり、福祉施設や公共施設では、健康の保持増進のためのプログラムを実施する場合がほとんどです。
最近では健康に関心を持つ方も増えているため、このようなプログラムを実施する施設も増えていますが、そのなかでスポーツ医療の知識を持っていると、プログラムの差別化が図れ、集客にもつながるでしょう。そして、公共施設のトレーニングルームなどでのサポート役としても活躍できます。
パーソナルトレーナー
パーソナルトレーナーは、その方の目的に合わせた運動や食事などの指導をおこなう職業です。運動面を指導する機会も多いため、スポーツ医療の知識を持っていると活かせる場面も多くなります。
また、スポーツ医療の知識があるとケガをしやすい部位などもわかるため、より安全なトレーニングを提案できます。お客さんが最大限のパフォーマンスを発揮するためにも、教える側もさまざまな知識が必要です。
そのなかでも、スポーツ医療はケガの予防や健康増進など活かせる分野も多く、知っておいて損のない分野です。
まとめ
スポーツ医療はなにに役立つのか、学ぶ方法、活かせる職業などはご理解いただけましたか。
スポーツ医療はスポーツ時のケガへの応用や、パフォーマンス向上のために研究されている分野です。最近では健康の保持増進のためのサポートにも応用されています。
スポーツ医療を学びたい場合は、専門学校や大学など、いくつかの学び方があります。必要な知識を身につけながら資格を取得できる方法もあるため、検討してください。ご自身が目指している医療系の職種の資格を取得する中で、スポーツ医療を学べる場合もあります。
スポーツ医療を学ぶと、病院やクリニックスタッフ、福祉施設や公共施設のスタッフ、パーソナルトレーナーなどの職業に活かせます。
就きたい職業と必要な知識を考えながら、ぜひスポーツ医療を学んでください。
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